≫音のはなし

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

年末のBGM ベートーベン交響曲第9番「合唱」

早いもので平成26年も残すところあと一週間となりました。

年末といえば「第9」が定番ですね。

百日紅のBGMもこれに倣います。


演奏は、昨年までのフルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団ではなく、

ワインガルトナー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のものを使います。

このソースは1936年の録音、もちろんSPレコードです。

全曲の演奏時間が1時間半に及ぶためレコードの枚数が膨大で、8枚16面あります。


指揮者フェリックス・ワインガルトナーは1862年オーストリアに生まれ、

当初は作曲家を目指しましたが、経済的安定を考えて指揮者に転向しました。

ベートーベンの作品に造詣が深く、作曲者が意図した演奏の再現を追求した人でした。

彼が活躍した19世紀末から20世紀前半にかけての時代は、

レコードが誕生し発展し始めた時期でもありました。

録音技術がまだ稚拙であるがゆえに多くの著名な演奏家がレコード録音をためらうなか、

ワインガルトナーはベートーベンの交響曲の録音に挑み、

全9曲の録音を成し遂げた最初の指揮者となったのです。

第9の録音は1926年にも行っていますが、

このときの第4楽章の歌は英語版だったそうです。

残念ながら私はまだ聞いたことがありません。

なお、1937年(昭和13年)には来日して、当時のNHK交響楽団を指揮しています。



今回使うレコードは国内プレスのものです。

30年近く前に池袋の中古レコード店で半ば打ち捨てられた状態にあったのを見つけ、

ただ同然の値段で手に入れました。オリジナルアルバムに収まった8枚のレコードは、

それなりの経年変化はあったものの、磨いてみたら盤面はきれいになりました。



No9.jpg



アルバムを開くと表紙の裏側に書き込みがありました。



昭和十七年九月二日於日本楽器

東京帝大入學記念〇〇〇〇氏ヨリ



昭和十七年九月といえば、太平洋戦争開戦から半年が経過し、

日本軍の勢いに翳りが見え始めた頃です。

この1年後には大学生等の学徒動員が始まり、

多くの学生が学業を離れて戦地に赴きました。

そしてその大半が戦死したことは周知の通りです。

レコードの状態が良かったということは、

所有者がほとんど針を下ろしていなかったということ。

彼がその後どのような運命をたどったのか …。

そう思うと、いたたまれない気持ちになります。



石臼碾き手打そば 「 百日紅 」



スポンサーサイト

百日紅のBGM ~フリッツ・クライスラーの芸術~

店内に流れているBGM。えらく古い音だなぁ、とお感じになりましたか?
これは、バイオリンのSPレコードを蓄音機で再生し、それをマイクで録音したものです。

1877年にエジソンが発明したレコードは、20世紀になってようやく
音楽を楽しむ娯楽手段として普及し始めました。
しかし、当時のレコードは録音技術がまだ稚拙で、
電気を用いない集音ラッパにより録音されたものだったため、
その出来は現代のレコードとは比較にならないほどお粗末なものでした。
これらのレコードの再生音は、壮絶な雑音の中から楽音がかすかに聞こえてくる程のもので、
音質としては現代のCDとは比較にならないものですが、
その音楽には聴く者の心に訴えるものがあります。

431px-Fritz_Kreisler.jpg
演奏家はオーストリアのバイオリニスト、フリッツ・クライスラー。
20世紀初頭から中期にかけて活躍した人です。
1923年(大正12年)には日本にも来ています。
(画像は、Wikipediaより)

この人は、まだ誕生して間もないレコードへの吹込みを積極的に行い、
世に出たレコードは自作のバイオリン小作品から
ベートーベン、ブラームスなどのバイオリン協奏曲といった大曲まで、
多岐に及んでいます。

私が所有するクライスラーのレコードは、
わずかその一部に過ぎませんが、それでも数が多すぎて、
そのすべてを1枚のMP3CDに入れることはできません。

そこで、今回は彼の初期の録音、
1904年から1924年ごろまでに作られたラッパ吹き込みのレコードの中から
以下の30曲を抜粋してCDに入れることにしました。


1 貴婦人(クープラン作曲・クライスラー編曲)
2 インディアン・ラーメント(ドヴォジャーク作曲・クライスラー編曲)
3 ウィーン奇想曲(自作)
4 プロヴァンスの朝の歌(クープラン・クライスラー編曲作曲)
5 スペイン舞曲(グラナドゥス作曲・クライスラー編曲)
6 マズルカ作品33の2(ショパン作曲・クライスラー編曲)
7 マズルカ作品67の4(ショパン作曲・クライスラー編曲)
8 スケルツォ(ディッタースドルフ作曲・クライスラー編曲)
9 変奏曲(タルティーニ作曲・クライスラー編曲)
10 スラヴ舞曲第2番(ドヴォジャーク作曲・クライスラー編曲)
11 ユーモレスク(ドヴォジャーク作曲・クライスラー編曲)
12 スラヴ舞曲第1番(ドヴォジャーク作曲・クライスラー編曲)
13 スーヴニール(ドルドラ作曲)
14 G線上のアリア(バッハ作曲・ウィルヘルミ編曲)
15 ガヴォット(バッハ作曲・クライスラー編曲)
16 プレリュード(バッハ作曲・クライスラー編曲)
17 メヌエット(パデレフスキー作曲・クライスラー編曲)
18 メロディ作品16(パデレフスキー作曲・クライスラー編曲)
19 スワニー河(フォスター作曲・クライスラー編曲)
20 ハンガリー舞曲第5番(ブラームス作曲・ヨアヒム編曲)
21 ワルツ作品39の15(ブラームス作曲・クライスラー編曲)
22 オンブラ・マイ・フ(ヘンデル作曲・クライスラー編曲)
23 メヌエット(ボッケリーニ作曲・クライスラー編曲)
24 タイスの瞑想曲(マスネー作曲・マルシック編曲)
25 太陽賛歌(リムスキー=コルサコフ作曲・クライスラー編曲)
26 ルイⅩⅢ世の歌とパヴァーヌ(クープラン作曲・クライスラー編曲)
27 愛の喜び(自作)
28 愛の悲しみ(自作)
29 中国の太鼓(自作)
30 美しきロスマリン(自作)

 
 ご注文の蕎麦ができるまで、ちょっとお耳を傾けて戴ければ幸いです。
                                    
                            百日紅  店主

川越成田不動尊蚤の市 (川越骨董市)

そういえば、レコード黎明期の音楽評論家 あらえびす が戦前に発表した著
「名曲決定盤」の中で書いていたっけ。
彼はチェコのバイオリニスト、ミロスラフ・コチアンのレコードを骨董市で、
捨て値同然で手に入れた由。


この人のレコードは、1903年に入れたコロンビアの片面3枚のみ。
私は国内のレコード店で見かけたことはありませんし、
海外のオークションでもめったに出ません。
それが故、私はこのことが頭から離れず、いまだに機会を見ては
川越にある成田不動尊の境内で、毎月28日に開かれる骨董市に足を運びます。


今までのところ、あらえびす ほどの掘り出し物はまだありませんが、
幾ばくかの収穫はありました。
そのうちの一枚がこれです。


   prihoda.jpg


コチアンと同国の出のバイオリニスト、ワーシャ・プシホダの独逸ポリドール盤。


この人のレコードは独逸グラモフォンとポリドールに大量にあり、
特にレアなものではないのですが、なぜか市場に出ると国の内外を問わず、
とにかく値が高い。その独逸ポリドールの一枚がなんと、野口英世一枚で出ていたのです。
即刻購入したのは言うまでもありません。


収録曲はヴィターリのシャコンヌとシューベルトのアヴェ・マリア。


しかし、プシホダは、こういった静かな曲を情緒たっぷり聴かせるよりは
むしろ、テンポが早くて高度な演奏技巧を要する曲を得意とした人。
その真骨頂はパガニーニやサラサーテにあります。
シャコンヌはフランス人ジャック・ティボーの方が良いし、
アヴェ・マリアも同じフランスのユジェーヌ・イザイエを始めとして
素晴らしい演奏が他にいくつもあります。


だから安かったのかな?


川越は近いので、私はこれからも足を運びます。
今度こそ、とんでもない掘り出し物に出会えるかも、と仄かに期待を膨らませて。

蕎麦屋おやじのSPレコード蒐集記 -中古レコード店の想い出- その1 続

(1)サンレコ社 のつづき


この店に足繁く通った理由はもうひとつあります。なんでこのレコードがこんな安い値段で出るの?
という、いわゆる「掘り出し物」がよく出たのです。今でも忘れられないのは、
ウィルヘルム・ケンプの弾いたベートーベンの「ワルトシュタイン・ソナタ」(旧吹き込み)
ドイツ・ポリドール12インチ盤3枚が夏目さん(その後野口さん)2枚で手に入ったことです。
このレコードが、他の店で出たら、この5倍以上はするし、
外国の業者からだってこの値段では絶対に買えないでしょう。


とにかく、この店のレコードの値段は他の店に比べて全般的に安いものでした。
私はオーストリアのバイオリニスト、フリッツ・クライスラーが大好きで、
この人の演奏のSPレコードは全部集めてやろうと思っていたから、
ここで出たクライスラーのレコードが、他に比べて3割から5割安かったのは
本当にありがたかったですね。今私が持っているクライスラーの12インチの
HMV紫盤片面十数枚のすべて、英国HMV赤盤両面四十有余枚のほとんどは
ここで購入したものです。
この店のおかげで、私はクライスラーのライブラリをかなり充実させることができました。
これもひとえにS君のおかげであると今でも思っています。


    kempff   kreisler 


平成3年頃から、新入荷のレコードが店頭に出る機会が減ってきました。
今思えば、その頃は丁度バブルが弾けた時期。
恐らく、サンレコ店主は、顧客の注文が減ったため、
海外にレコードの買い付けに行く頻度を減らさざるを得なくなったのでしょう。


また、私は私で、丁度その頃、あるきっかけから海外のSPレコード業者を知り、
これらの業者からダイレクトにレコードを買うようになっていました。
そうすると、この店から足が遠のくのは自然の成り行き。
あれほど頻繁に通っていたこの店に足を運ぶのを止めてしまいました。


S君が店をやめたとのうわさを耳にしたのは、平成になって5年目くらいのことでしょうか。
店長とついに衝突したらしいと聞きました。S君がその後どうしているかは不明です。
因みに店主もいつの間にか代わってしまい、こちらについてもその後の消息は聞いてません。


(1)「サンレコ社」-おしまい

蕎麦屋おやじのSPレコード蒐集記 -中古レコード店の想い出- その1

(1)サンレコ社


この店はJR池袋駅東口の近くにありました。現状はどうなっているかはわかりません。
が、私が最後に足を運んだときには、既に店主は別の人になっており、SPレコードも扱っていませんでした。

しかし、かつてこの店は専らクラシックのSPレコードを頻繁に仕入れ、
安い値段で我々蒐集家に提供してくれていました。
スリムな雑居ビルの2階をすべて店舗にしたこの店は、
その決して広いとはいえない店舗のほぼ4分の1をSPレコードコーナーに割き、
そこに並ぶレコードの品揃えは、お茶の水の富士レコード社にこそ及ばないものの、
実に見事なものでした。レコードの新入荷も頻繁にあり、私はここでお目当てのレコードを
ずいぶんと手に入れることができたのでした。今から20年と少し前、私は毎月給料日には必ず、
仕事が終わるのを待って、いくばくかのお金を握り締めてこの店に急いだものです。
今日はどんなレコードが入っているだろうか、と期待を膨らませて。
 
この店では、いろんな貴重なレコードに出会いました。
サラサーテ自作自演の「チゴイネルワイゼン」(米国VICTROLA黒両面盤)、 「ツァパテアード」(仏G&T)、
珍品の代表格であるヨアヒムのG&T赤盤「ハンガリー舞曲第2番」(40万円!)、
ネリー・メルバの英G&T盤などなど.....。


         joachim.jpg
      ヨアヒム:ハンガリア舞曲第1番(仏G&T)
      これは後年黒レーベル両面盤として再発売されたもの。
      裏面はハンガリア舞曲第2番。後年海外オークションで入手


私はここの店主とは、はっきり言ってソリが会いませんでした。
彼は当時の私のような若い客を見下し、差別するのです。
この店主の、私への応対は、青二才の分際で骨董レコードに手を出すなんぞ生意気だ、
とでも言わんばかりのもので、私はずいぶんと不快な思いをしました。

この店長は、金持ちの顧客のニーズを受けて、頻繁に海外にレコードの買い付けに
行っていたようでした。彼の顧客の一人であり、私が当時懇意にしていただいていた
あるオーディオショップの社長が、サンレコ店主にもらったというレコードリストを
私に見せてくれたことがあります。店主により「閲覧限定」と記されたリストにあったレコードは、
ゲルハルト=ニキシュ盤、ヨアヒムG&T等壮々たるもので、値段はすべて6桁。
私には絶対に手の届かないものばかりでした。だから、彼にしてみれば、
そういう高価な買い物をする顧客に比べ、僅か数千円のレコードを前に、買うか買わないかで迷ったり、
持ち合わせがないからといって取り置きを求める私のような貧乏客など、
客として遇するに値しないものと映ったのかも知れません。


しかし、この店の唯一の店員であるS君は違いました。
私より4、5歳は若かったであろう彼は、貧乏客の私に対しても丁寧な対応をしてくれ、
欲しいレコードがあるが持ち合わせがない、というときには、給料日まで取り置きもしてくれました。
彼の気遣いがうれしくて、私は店長に不快な思いをさせられても懲りることなくこの店に通ったのでした。
私が今のライブラリを備えることができたのは、彼のおかげもあるのです。   ― つづく ―
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
プロフィール

二代目「百日紅」

Author:二代目「百日紅」
埼玉県日高市にある石臼碾き手打ちそば屋「百日紅」の二代目店主です。そばの話、趣味の話、小さな旅の話、そしてヒトやモノとの出会い。
日々、感じたことをつぶやきます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。